〜線路からおばあちゃんを救った青年〜
ホームにいた人はほぼみな携帯電話を見ていた。私もその一人だった。
青年が突然改札口に向かって走り出した。
何事かと目で追った。青年はヒラリと見事に自動改札を飛び越え、遮断機が降りている踏切内に躊躇なく飛び込んだ。
その時にはもうホームにいたみんなも気づいていた。
反対側の踏切に渡り切れなかったおばあちゃんがいる事を。
その青年はあっという間におばあちゃんと押しぐるまを片手で抱きあげ、片手で遮断機を押し上げ一緒に脱出した。
そして電車がホームに入って来た。2人は見えなくなってしまった。
多くの人は電車に乗った。私も電車に乗った。電車も時間通りに走り出した。車内では「気がつかなかった〜」などと口々に話す人達がいた。
私は初めて本物のヒーローをみた。